川上村木匠塾20周年

木匠塾20周年、
おめでとうございます。 川上村村長の言葉

これまでの20年間、川上村木匠塾に携わっていただいた多くの皆様に深く感謝申し上げます。 川上村木匠塾は、関西の5大学が日本を代表する林業地である川上村を拠点とし、山村の生活、日本の林業、木という素材について多くを学ぶことを目的とし、平成10年から始まり今年で20年目を迎えました。 私と木匠塾との出会いは三澤文子先生との出会いがきっかけでした。 当時の吉野林業は非常に苦しい状況に置かれていました。産業振興課長だった私は、何とかして吉野林業を再生できないだろうか、そんな話を当時の林業課長と毎日していました。そんな時、林野庁の方から紹介されたのが三澤先生でした。 先生とお会いし、お話を聞いていく中で「吉野林業は王道をいかなければならない」と心強いお言葉をいただき勇気づけられました。さらに、林業を学び、木造建築を学んでいる学生はたくさんいると聞き、岐阜県加子母村で行われていた木匠塾を知ったのです。 吉野林業の中心地である川上村にも、多くの学生たちに集まってもらい吉野の林業を学ばせたい。そしていろんな形で村と交流し、川上村の木の良さを広めていただきたい。そんな思いから川上村木匠塾がスタートしたのです。 井光区での活動に始まり高原区池坪での作業。白川渡オートキャンプ場の木匠ベルトや公共エリアのモニュメントなど、今、村の中には木匠塾塾生の皆さんの作品が数多く見られるようになりました。製作物の中には住民の方々の生活に溶け込み、無くてはならない物も少なくありません。また、村民の方々との交流も盛んとなり、かみせ祭りなど村のイベントへの参加も木匠塾を知っていただける機会となっています。
当初からサポートいただいている高原区長やシルバー人材センターの方々のように、木匠塾には欠かせない村の人たちも増えていると聞いています。そう言った村民の方々との交流の積み重ねは、塾生の皆さんの財産にもなることでしょう。 村はこの20年間、川上宣言を発信し、水源地の村、木と水と人の共生を掲げ、水源地の村づくりを進めてきました。そんな私たちの思いは高い評価をいただき、内外から多くの応援をいただいています。 水源地の村づくりを進めていく中で、山や森林、そして森を再生していくためには吉野林業の再生が必要不可欠と考えています。山や森は水を育み、人を育み、そして私たちの暮らしを豊かにしていく。そんな取り組みと同じくして川上村木匠塾は20年間続いてまいりました。それは川上村の村づくりには川上村木匠塾が必要不可欠である。そんな思いの表れだと思います。 一つの事業を続けていくには、非常に大きなエネルギーが必要だと思います。しかし学生の皆さんの若いパワーならこの先もきっと続けていけるでしょう。 この20年間を振り返ると同時に、これまで川上村木匠塾に携わっていただいた皆さんと村の関わりが、これからの村、木匠塾をどのように進化させていくのか、次の20年への課題だと思います。 新たなスタートを切った川上村木匠塾。引き続き皆様のご支援をいただきますよう、よろしくお願いいたします。

川上村村長 栗山 忠昭

川上村木匠塾20周年

20年の活動を振り返り、
新たな年輪を刻む糧として 川上村木匠塾塾長の言葉

吉野林業発祥の地である川上村で川上村木匠塾が産声をあげて20年目の節目を迎えました。人生で例えるなら20歳は成人式ですが、近年の川上村木匠塾の活動プログラムや完成した制作物をみると、川上村木匠塾も者レベルから成人の領域に入りつつあると感じています。この20周年の節目に、これまでの活動の足跡を広くご高覧いただき忌憚のないご意見を頂戴いたしたく「川上村木匠塾20年記念誌」を企画・発刊いたしました。 川上村木匠塾は、学内の座学だけでは学び得ない、林業の間伐・流通のあり方や木材を使った設計・施工プログラムなどを通じてリアルに木材・建築・ものづくりを深く考え実践してきたプロジェクトベースドラーニングです。参加校は関西の建築系学科のある大学や専門学校(現参加校:大阪芸術大学、大阪工業大学、近畿大学、滋賀県立大学、奈良女子大学)の教員有志と学生、そして川上村役場と共同運営してきました。自然豊かな場所で、実学としてのものづくりを学びながら、価値観の異なる学校の若人が協働し、時には助け合い、時にはケンカをして豊かな人間性を育むことも目的にしています。 20年間で約800人(延人数として約1,400人)の若人がこのプログラムを修了し、修了生の多くは建築業界を中心に社会の第一線で活躍しています。そして、塾生たちが制作してきた建築やプロダクトの多くは川上村のみなさんや観光客の方々に利用されています。 当記念誌は、川上村木匠塾の20年間の活動を振り返るとともに、2月10日〜11日に行われた20周年記念の事業を記録に留めるものです。フォーラム、コドモク、大交流会、村長と語る会、を報告しています。特にゲストを交えて行われた2つのシンポジウムについては全内容を再現しています。川上村木匠塾関係者以外の方でも、新たな気づきや未来への可能性が見いだせる内容ですので、是非ご一読ください。インタヴューコーナーでは、役場の歴代木匠塾担当を代表して森口尚さん(現吉野かわかみ社中局長)、前塾長の山根周先生(現関西大学准教授)、歴代代表幹事から宮野和成さん木下潤一さんに登場いただき、木匠塾に関わられていた当時のことなどを振りかえりながら、川上村木匠塾への期待などを語っていただいています。
川上村木匠塾年表をみていただくと、活動や作品の傾向が変わっていくことがお判りいただけるかと思います。1~5年目までは実験期としてどのような活動プログラムを展開していくべきかを模索をしていました。主たる活動地も人里はなれた山上などで、野営しながらの活動はある意味おおらかでした。作品も仮設性のものが多かったといえます。不便ではありましたが自然に包まれる1週間は若人の野生の感性を呼び覚ましました。5~9年は発展期といえます。山上から吉野川近辺の人里に降りてきて地区の公民館などをベースにしながら村民に役立つものを制作しはじめ、間伐材を活かした若人ならでは制作物が徐々に生まれはじめます。10年目からは旧トントン工作館を「川上村木匠館」として使用させていただけることになりました。木工加工の設備が整ったベースキャンプを得て、活動と作品のレベルも向上してきています。特に塾生たちが林業体験で間伐した材をストックし、その材を自然乾燥させたうえで次年度以降の制作物に使用する循環が生まれたことは木材の流通を考える教育プログラムとして特筆すべきものといえます。更に、近年では過去の作品のメインテナンス活動なども定期的に行い作品の使用年数を更新させています。 この記念誌では誌面が限られ写真も小さいので、活動の紹介は一部に留まりますが、林業の村で木材とふれあい格闘しながら制作物を完成させ、価値観が異なる学校の若人が切磋琢磨しながら成長していく熱量を少しでも感じていただければ幸いです。 この活動が20年間継続できたのも一重に栗山忠昭村長はじめ川上村役場のみなさまの手厚いサポートがあってのことです。そして制作に伺った地区などで村民の皆様の温かいご理解とご支援があってのことです。ここに改めてお礼を申しあげます。 2月11日に行われた「村長と語る会」では、塾生OGOBと川上村とのネットワークをこれまで以上に意義深いものにするアイデアを話し合いました。今春からは、そのアイデアを実施に移していきます。そして、21期生たちも3月から川上村や各学校内で活動を開始します。気持ちを新たに次の25年を目指してより良い活動を展開してまいりますので、引き続き、みなさまからのご支援や叱咤激励を頂戴できれば幸いです。よろしくお願い申し上げます。

川上村木匠塾塾長 寺地 洋之

川上村木匠塾20周年

20周年おめでとう
川上村木匠塾 川上村木匠塾20周年記念事業実行委員会の言葉

川上村木匠塾は1998 年に井光地区からはじまり、2017年、ついに20周年をむかえました。今回の記念事業は、歴代代表幹事をはじめ、OBOG、現役学生に加え、川上村役場の方々、そして、これまで見守ってきて下さった川上村の方々により、成り立っています。 やまぶきホールにおいて20周年をふり返る展示からはじまり、現役学生による基調報告、第一線で活躍する木に関わる人と村との議論と交流。会場は杉の湯に移動し大交流会。そして翌日の役場での囲む会の議論。この記念誌ではすべてを伝えきることは難しいですが、貴重な二日間が川上村にありました。 2017年現在、林業を含めた山間地域は都市部に比べて厳しい状況にあります。また全国的に人口減少が叫ばれていますが、決定的な打開策は見えていません。また、産業構造の変化や世代交代に関わる後継者不足など、多くの課題を抱えています。しかし都市部ではできない、新たな関わりや取り組みは続いています。その取り組みがあるからこそ、次代の価値への転換が起こるのです。
10周年記念事業は大阪中心部で行われました。その時の連絡網は10年の歳月が流れ、コミュニケーション手段も変化し、殆んど使えないものとなりました。しかし、人と人とのコミュニケーションは細い糸で残っており、SNSなどの連絡ツールを活用して今回の20周年事業のつながりを拡げるようにしました。今後は、今回作ったフェイスブックなどを介して塾生OBOGの輪が広がっていくことを期待しています。 今回、諸事情で参加が叶わなかった方々、これからも川上村木匠塾は続きます。是非、毎年行われる「サマースクール」そして学生も参加する川上村の「かみせ祭り」などにあわせて、川上村に足を運んでください。そこには昔の自分を見つけることが出来るかもしれません。そこにはその時の仲間との思い出や変わらぬ自然があります。そして、村の方々が、きっと笑顔で迎えてくれます。

川上村木匠塾20周年記念事業実行委員会

記念誌のご案内 PUBLISHED

記念誌

川上村木匠塾20周年記念誌

2018年3月発行 発行:川上村木匠塾20周年記念事業実行委員会 奈良県吉野郡川上村迫1335-7 川上村役場内 編集・デザイン:木下 潤一、江南 桃、片山諒 印刷・製本:株式会社グラフィック ©2018 川上村木匠塾

1冊/1000円(送料込) 少部数残あります。ご入り用の方はお問い合わせください。 ※川上村木匠塾現役生・OB・OGの方に限らせていただきます。

川上村木匠塾20周年記念事業実行委員会

会長 川上村木匠塾 塾長 寺地 洋之 大工大教員 副会長 川上村参与 上田 一仁 川上村職員 委員 川上村木匠塾 柴 清文 近大教員 委員 川上村木匠塾 佐々木一泰 滋賀県大教員 委員 川上村木匠塾 長田 直之 奈良女子大教員 監事 川上村木匠塾 会計 田口 雅一 大阪芸大教員 事務局長 川上村地域振興課 課長 森脇 深 川上村職員 事務局 川上村地域振興課 副課長 杉本 晃一 川上村職員
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